機を逃しかけていました。ベストアルバム2012を書きます。色々と書きたい事は山ほどあるのですが、作業量がとんでもない事になるので、とにかく聴きまくった5枚+αを選んで書くことになりました。


Baroness - Yellow & Green

 イエローとグリーンでコンセプトを分けた2枚組みで発表されたアルバム。括りとしてはメタルになるはずなのだが、実際の中身は半分以上が柔らかいもので構成されている。元々フォーク色を取り入れたバンドではあったが、最初に聴いた印象では、続けて聴くには物足りない感じがした。しかしながら数日の放置期間を過ぎると、1日中これを聴きっぱなしなんて日もあったぐらいに引っ張られる魔力を有していた(欲を言えばダウンロードコードを付けて欲しかった。前作には付いてたのに。室内専用アルバムになってる)。Vo.GtのJohn Dyer Baizleyがアートワークを担当しており、今回の中身の路線変更に伴い、女性の表情というかテイストが大きく変化している。数年後の次回作ではまた全然違うものになっているんだろう。


Yellow & Green [12 inch Analog]

Yellow & Green [12 inch Analog]


The Mars Volta - Noctourniquet

 ようやく出た6枚目のアルバム。このバンドは以前、4thアルバムをボツにしている(はず)。そして5枚目と6枚目を同時制作しているという事を以前インタビューで言っていた。しかしドラマーの脱退によってそれは恐らくお蔵入りしたものと思われる。今回出たこのアルバムがMars Voltaというバンドのどういった位置にあるものなのかがいまいち分からない。けれどもオマーがアルバムリリースよりもライブ活動にシフトしているしている現在では、少人数で再現可能なこのシンプルな構成がちょうどいいのだろう。本当に必要な音しか入っていない。見たまま聴いたままなのがパッケージに表れている。3Dメガネ付きで歌詞やメンバー写真が浮き上がるという仕様。まさに現在の象徴、最後の置き土産。
 どういった形でアルバム製作が進んだかは分からないが、音源とライブではドラムが完全に別物になっている。屋台骨を支えるといったドラマーとしての当然の義務を放棄し、好き勝手やるディーントニー・パークスの勇姿は素晴らしいものがある。


Noctourniquet [12 inch Analog]

Noctourniquet [12 inch Analog]


Mami - World

 この人の声は地鳴りのように空間を揺らす。過酷な旅を繰り返しているからこその賜物なのだろう。紡がれる言葉の優しさに紛れて、人の心を動かさんとする覚悟がひしひしと伝わってくる。吐き出したいのに受け皿の見当たらない状況の中でようやく結実したアルバム。積もり積もった詰まりに詰まったアルバムだった。そんな風に感じた。エモーショナルというものは喚き散らすのではなく、こういうものの事を言うのだろう。クレジットを見るとこれがほぼ宅録っぽいからさらに驚嘆。「祈り」「深森の月」「Life」には確実に霊的な何かが吹き込まれている。

WORLD

WORLD


Serj Tankian - Harakiri

 今回挙げられたアルバムの中で、ダントツで1番聴いたアルバム。誰が見ても明らかなこの腐った暗黒の中に光を照らす存在。1〜5曲目までは全体に対しての演説のような世界への糾弾。6〜10曲目では、痛みを共有するように、まるで1人1人に語りかけるような口調で展開される。そしてラスト2曲では、前半とはまるで違った力強さと説得力を持ってまた世界に向けて言葉を発信する。大それた事に見えるかもしれない。しかしそれでもあまりにもちっぽけな力でしかない。それでも何かせずにはいられない衝動に駆られる。これは手段ではなく起爆剤。立ち上がれという声とともに、方法は各々に任せるといった強制ではなく、あくまでもこちらに選択権を委ねているように思える。燃えた命によって始まった命を燃やす為の物語。そう受け取った。

Harakiri

Harakiri


Ancestors - In Dreams And Time

 始まりはとても単純。ジャケ買いです。ジャケ買いって大抵中身はメタルになってしまうんだけれども、これもご多聞にもれずドゥームメタルだったわけですが、ただ絶望を音にしているだけではなかった。Serj Tankian - Harakiriを光で人々を導くアルバムだとしたら、これはその光を手にするまでの物語。長い絶望の中で怒り悲しむ様が70'sプログレ的な上手い構成で綺麗に語られていく。ベタだけど、希望を捨てていないんだろうな。物語の主人公がいるとすれば。だから冗長になったり散漫になったりしない。それどころかぐいぐい引き込まれる音一つ一つが何を言わんとしているのかが気になるし、最後の曲「First Light」は段々と光明が見えてくる展開が聴いていて痛快。そしてラストは全て報われたかのような高揚感。これは抜け出せなくなる。何度でも聴きたくなる。個人的には今年最も素晴らしいアルバムだったと胸を張って言える。

In Dreams & Time [12 inch Analog]

In Dreams & Time [12 inch Analog]


 以上のような感じです。上記以外にも凄いアルバムを沢山手にしたのだけれども、まとめてやると何が何だか分からなくなってしまいそうなので、ここで区切りたいと思います。最後にもう1枚。これは去年リリースされたアルバムだけれども、LPは今年の3月にオフィシャルサイト経由でのみ販売されたもの。このアルバムは前作から4年越しで発表されたもので、その間ライブ活動をメインに行っていたようで、とにかくライブ色の強いものに仕上がっている。この点Baronessとは正反対だ。どこに分かれ道があったのか。しかしこれは本当にいいアルバムだ。去年の内にLPが出ていれば、これが去年のベストアルバムにあっていたかも。

Fair to Midland - Arrows & Anchors


Arrows & Anchors

Arrows & Anchors