魅力再発見!!【Dramasochistic Bon-voyage】目的意識と余波による影響への期待

 お待たせしました。対談企画第2弾です。今月は約半年前にリリースした「Dramasochistic Bon-voyage」を掘り下げていきます。EPを5枚リリースしようというアイデアはこの頃に生まれました。一気に現在進めているプロジェクトの大枠を作り上げることになった転機にあるこのEPを掘り下げることで、また一つプロジェクト自体の理解が深まると思います。

 

 

前回「Mahoramatic Non-fiction」対談企画

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商業ベースで音楽を制作する人間ではないので、自分の楽曲制作が、聴く人が過去の名盤に辿り着く足掛かりになればいいな、という思いも芽生えていました

 

―さて対談企画第2弾として「Dramasochistic Bon-voyage」を掘り下げていきますが、まずは読者が入り込みやすいように、このEPのインスピレーションから伺っていきます。どのようなものに影響を受けて生まれたのか。その背景から徐々にメインのコンセプトに届かせていきます。

 

 

 


Dramasochistic Bon-voyage【CD無料配布実施中】&【FREE DOWNLOAD】

 

 

コンポーザー城台(以下、コン城):Mahoramatic Non-fictionにはレヴェナントの映画からのインスピレーションが発端でした。それで出来上がったものが結果的にダンスミュージックまで派生したのですが、Dramasochistic Bon-voyageは元々Mahoramatic Non-fictionから漏れた2曲を再度作り直そうという目的がありました。

 

 

詳細な経緯は下の記事を参照下さい。

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それで、どういう風にすればより楽曲が輝くかを考えていて、本作から明確に参考にした曲が幾つかあります。商業ベースで音楽を制作する人間ではないので、自分の楽曲制作が、聴く人が過去の名盤に辿り着く足掛かりになればいいな、という思いも芽生えていました。

 

1曲目の「Eklepton thadd Pellugraw(エクレプトン・サッド・ペルーグラウ)」は、トランスを基盤にして、キングクリムゾンのFracture、ダンスダンスレボリューションPARANOiA HADESを参考にしています。

 


King Crimson - Fracture (OFFICIAL)

 


DDR SN 2 PARANOiA ~HADES~

 

曲の展開はかなりキングクリムゾンのFractureを参考にしています。序盤にかすかに鳴っていたメロディが中盤から爆発したり、後半限界の先へ向かうような緊迫感と、突き抜けて行くところまで行ってしまう感じなどですね。

 

Mahoramatic Non-fictionのときに言いましたが、キングクリムゾンのスターレスと出会って、楽曲制作・アルバム制作に多大な影響を受けたわけですが、実はしばらくキングクリムゾンに浸り続けた結果、「本当に凄い曲はFractureの方ではないか」と思うようになりました。実はこの曲はライブ音源で、「終盤の一発勝負の絶対にミスれない状況下での緊迫感」はこの音源に勝るものはないと思います。

 

グラフィックデザイナー城台(以下、グラ城):特に10:02(上の動画)のところからの全員で目を合わせながら「お前らミスんなよ。絶対にミスんじゃねぇぞッ」ていうハラハラ感も全て頭に浮かびます。笑うしかないですね。

 

コン城:この緊迫感とPARANOiA HADESの鬱屈さに拍車をかけながらも疾走感はむしろ加速していく矛盾というか、ある種の開き直りによって突き抜けていく精神性を取り入れました。

 

むしろ取り入れたというよりかは、欲しいと思った要素を自分の記憶にある過去のアーカイブから引っ張り出した、と言った方がいいかもしれません。それで選ばれたのが上に挙げた2曲です。この2曲を聴いたとき「もう笑うしかない」という感情しか残らないようなものにしようとした結果がこれです

 

―深く深く堀り進んで行って、最後叫び声を上げて終わりますね。このEPのコンセプトが非力な自分を奮い立たせるために「痛覚を灼く」という側面があり、真っ向からそれと対峙した楽曲が「Eklepton thadd Pellugraw」だと。

 

グラ城:それを踏まえて客観的に聴くと、本編の終わりにアウトロがようやく意識を取り戻して起き上がる姿が思い浮かびます。一瞬これが思い浮かんだんですが、遠いようでいて近い気がします。

 

 


ダンソン フィーザキ

 

 

コン城:大正解ですwww

 

―わからなくもないですが、あくまで「最初の一発目」は雰囲気マッチしていますね。他にインスピレーションの源として何が挙げられますか?

 

コン城:あとはリアルタイムでリリースされた曲やアルバムからのダイレクトな影響は強いですね。このEPは2月からレコーディングを始めました。

 

まず3月にTHE BACK HORNがライブ映えする7曲で構成したミニアルバム「情景泥棒」、4月にGacharic Spinがアルバム「G-litter」、5月に9mm Parabellum Bulletがバンド完全復活の狼煙を上げる「キャリーオン」をリリース。

 


THE BACK HORN - 『情景泥棒』 ダイジェスト音源【楽曲解説付き】

 


Gacharic Spin 「Redline」 Music Video(Short Version)

 


9mm Parabellum Bullet - キャリーオン

 

 

さらに6月にTHE ORAL CIGARETTESがアルバム「Kisses and Kills」、LAID BACK OCEANが結成8年にして満を持してのアルバム「NEW MOON」。この2枚は特にEP音源完成間際にぶつかって、多大な影響を受けています。同期サウンドという共通点もありますが、むしろアルバムの勢いや意志に触発されて、「こんなんじゃ全然ダメだ」てなって終わったと思った作業を見直し、ミックスの精度をとにかく高めていました。

 


THE ORAL CIGARETTES「Kisses and Kills」Trailer -4th AL「Kisses and Kills」6/13 Release-

 


STANDING BACK / LAID BACK OCEAN

 

 

この辺は参考にしたというよりは「共感した」と言った方がいいんでしょうか。音楽を作り続けていく中で、同時代に生きるそれぞれの使命感に突き動かされた部分が大きいですね。楽曲の中身は自分の中でどうしたいのかは明確だったので直接寄せていくような事にはなっていません。ただやっぱり最後の詰めの労力を惜しまずにやろうと意識させてくれたのは上に挙げた楽曲たちからですね。

 

グラ城:「負けてられない」という気持ちがやはり何よりですね。性分として、どうしてもただ与えられるだけのリスナーではいられないんですよね。世界と自分を比べずにはいられないし、小さくても少なくても得た分の何かを吐き出そうとしてしまいます。

 

コン城:2曲目の「Hohzkin Mimoriza(ホフスキン・ミモリザ)」は没落からの復活をイメージしています。何の情報もなくこの曲を聴くと、どこかの新興宗教がダメになっていく様を思い起こされるようにも感じられます。

 

元々、教会音楽や宗教音楽が持っているスピリチュアルな部分だけを抽出して「浸る音楽」を追求している流れから生まれた曲です。全てが終わって無くなってしまった後にもう一度何かが始まる気配を残す感じなり、Eklepton thadd Pellugrawと続けて聴くことでより意味のある流れが出来上がりました。

 

参考にしたものと言えば、John Frescianteの「Unreachable」が大きいですね。それとTyondai Braxtonの「Dead Strings」も曲の構造がどうなっているのか、解体しながら聴いていた時期がありました。

 


John Frusciante - Unreachable

 


Tyondai Braxton - Dead Strings

 

これは参考にしたのか、それとも完成してからイメージに近いものでこれが思い起こされたのか、どっちが先だったのかは定かではありませんが、後は映画「Eyes Wide Shut」の儀式シーンの曲でしょうか。

 

グラ城:実際の映画のシーンは動画サイトに投稿したら削除どころか一発で垢BANされそうなやつですね。映画そのものは本当にいいものなので、是非多くの人に観て欲しい名画なのは間違いないです。

 


Jocelyn Pook - Masked Ball (Eyes Wide Shut) 

アイズ ワイド シャット [Blu-ray]

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実はこの曲を作る前に何曲かアンビエントな曲を作っていました。その中から2曲ほど混ぜ合わせたものがHohzkin Mimorizaの原型になっています。実際に採用はされませんでしたが、以前その内の1曲をインスタにアップしていました。これは単体でそれなりに気に入っています。たまに聴き直してます。

 

Instagram post by Glow Defective Soldier • Jan 11, 2018 at 4:55am UTC

 

出来上がった曲の中から、より自分の中にあるイメージに近いものを選んでブラッシュアップしたものがHohzkin Mimorizaの完成形になります。

 

 

肩書きとしては死んでいたとしても、創作人としての自覚は潰えていなかったからこそ紡がれていったプロジェクト

 

―なるほど。このDramasochistic Bon-voyageからEP連続リリースの構想が出来上がるわけですが、コンセプトが出来上がっていく背景を時系列順にお願いします。

 

グラ城:元々このEPのタイトルは「Lovers Tempest」でした。Mahoramatic Non-fictionがいわば「全トラック=全プレイヤー」的な全力セッションのような詰め込みようだったので、そこから一歩引いた「出るとこでは出る、引くところでは引く」をテーマにしていこうと思っていました。

 

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―「出るとこでは出る、引くところでは引く。それはまるで愛の様に嵐を紡ぐ。Lovers Tempest」ですね。

 

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タイトルも「~tic ○○‐○○」で統一できるほどアイデアが出てきていませんでした。既に「Bon-voyage」はあったのですが、これは「船出」に強い意味合いを持っていたので、来るアルバムのタイトルに持ってこようと思っていました。

 

ある時、夜に外を走っているとふとアイデアが降ってきました。「ドラマ」と「マゾヒスティック」が急にくっついて、「ドラマゾヒスティック」になりました。この言葉の意味が何かを考えていると、自分が現時点で置かれている状況とリンクしたんです。

 

前職で全くと言っていいほど役に立たない存在、成長を望んでもまるで成果が出ない、助けられてばかり、守ってもらってばかりの自分。ただそんな状況でもなんとかしがみ付こうとしている自分を俯瞰してみている言葉に感じられたんです。

 

 

「Dramasochistic Bon-voyage」
ドラマゾヒスティック・ボンボヤージュ

「Drama+Masochistic」
「ドラマ+マゾヒスティック」
「演技+いわゆるドMのマゾ」
それに「Bon-voyage=(航海のときに使う)よい旅を」

 「ドラマ+マゾヒスティック」はですね、前回のブログで書きました、城台の仕事ぶりが残念極まりないという状況から。やっぱり表には出せないんですね性格上。しかし内心「だーくそっ」とか「ちょっ待っとけやー」「やってやんよチクショー」とかあるんですね。しかしやってもやっても仕事はダメダメのまま。そこからきています。

 EPタイトルは一気にズドンと降ってきました。ふと自分を俯瞰した時に、そのタイトルと自分の状況が全くもって一致していることに気付きました。「だーくそっ」とか「ちょっ待っとけやー」「やってやんよチクショー」とかっていうのは、もしかしたら究極的に突き詰めたら「演技」なのかなって思ったりしました。打たれまくってもへこたれずに挑み続ける。スポ根です。そんなもの男なら誰だって持ってるものだと思っていました。問題はそれで自分が前進していないこと。「チクショー」があるだけでそれをバネに出来ないもどかしさ。

Dramasochistic Bon​-​voyageのコンセプト - Glow Defective Soldier’s Official Blog より

 

 

「Bon-voyage」は大事に取っておこうと思っていましたが、とてもベストな言葉だったのでここで使いました。このカードを早々に切ってしまったことによって、次の言葉を考えざるを得なくなりました。一連の流れや大きな枠組みを意識していたので、形はどうあれ連続リリースはこの時点で想定していました。それで探していくうちに、「Rainbow」「Sunrises」が集まってきました。全部で4つ揃った時点で、きりのいいように「5枚のEPを作ろう」と考え始めました。それでもう一つを探していると最後に「Lupinkey」が弾き出されました。

 

―ほぼほぼ見切り発車というか、勢いで決めた感じなんですね。

 

グラ城:この時はまだあくまでも「個人的な記録」の域に留めておくだけのものだったので、数年後に完結すればいいと思っていました。CD無料配布を始めようと思ったのもここが最初です。

 

需要は小さくても、誰かに聴いてもらいたいという気持ちはあったので、それをどうやって届けようかと考えた結果でした。フォトコラージュアーティスト、グラフィックデザイナーとしては死んでいたので、自己実現と自己満足が目的なので、細々とやっていく形として、そうした創作でのコミュニティへの欲求解消を求めていたのかもしれません。聴いてくれる人がいるならちゃんとした形で渡したい。金銭を受け取るなんてそんな、なんて考えていましたね。

 

 ―紆余曲折を経て人生の一大プロジェクトになってしまいましたね。

 

 コン城:レコーディングスタートが去年の2月なので、ちょうど丸一年です。このEPを作る経緯が「前作から漏れた曲のリブート」なので、それを思うと不思議な感覚ですね。あれよあれよという間に話しが膨らんでいきました。

 

「コンポーザー城台に完全に好き勝手やらせる」

「グラフィックデザイナー城台がより良い方向に舵を切る」

 

―もしかしたらきっかけを探していたのかもしれませんね。肩書きとしては死んでいたとしても、創作人としての自覚は潰えていなかったからこそ紡がれていったプロジェクトだとも言えるのかもしれません。

 

グラ城:それは大いにあるかもしれません。でもまだ自分のパーソナルな環境内での出来事のための作品でしかありませんでした。リリース前にインスタにDramasochistic Bon-voyageのコンセプトを投稿したのですが、それを見返すと、この時点では外に出るための一歩は踏み出せていません。自分の当時の職場環境から来た内容です。引用しておきます。

 

鈍重な精神は、鞭打つ事でしか前に進めないのなら、たとえその痛みが悲鳴を上げる程のものであったとしても、そうする事でしか前に進めないのだから甘んじて受けよう。そんな己の軟弱さを受け入れて前に進む事。それがDramasochistic Bon-voyage。

 

他人の嘲笑を受けながらも、ウルセェやってやんだラァと啖呵を切る事。目の前の障壁があまりにも高く、無理を承知で飛び込んで火傷して、それでも何度も何度も果敢に飛び込み続ける意志。そんな己の愚直さの裏にある進歩には届かない現状維持の行為を誤魔化し、前にだけ視線を向け続ける事。それもDramasochistic Bon-voyage。

 

叱責にまみれ、それでもめげないそれだけの根性しか持ち合わせず、後退はしていないと失敗をバネにしきれない及び腰の穀潰しの開き直り。それもDramasochistic Bon-voyage。

 

誰が口にしたのか、Dramasochistic Bon-voyage。自身を俯瞰するもう一人の人格。そんな大層な代物ではなく、心の熱を失念した自分自身に他ならない。

 

鞭打たれながら前に進む自分に自惚れ、誰よりも強固な精神力を持ち合わせていると偽り、その実、他者の先導無しには何も出来ない愚鈍な屍。とんだドM根性と一丁前な強がりという演技(ドラマ)に興じるクソナルシシズム。そうしてこれまで生きて来たのだから、それでしか生きられないのだから。

 

これからの航路を進むにあたり、今一度、己の残念さ加減と対峙しなければならない。痛覚に直接触れ、握りツブす。炎症を起こし、冷めきった精神を灼く。自身を俯瞰するもう一人の人格という大層な代物ではなく、心の熱を失念した自分自身にもう一度火を灯す。それが自身を先導する灯りになり、その先を進む松明となれば何かが変わろう。

 

Dramasochistic Bon-voyageとは、その言葉自体との別れを目的とし、そうして好転したこれからの人生を迎える事が出来たなら、それはMahoramatic Non-fictionとなる。

 

その先の景色の中で一際美しいものと出逢い、その手で掴もうとする事。それがAIDMAtic live Rain-bow。

 

それはまた、次の物語。

 

当時インスタのストーリーにこの文章を英訳してさらに日本語に訳し直したものをアップしました。なぜそれをやったのか憶えていませんが、結果の文章が非常に面白い仕上がりになったのでここに貼っておきます。新しい視点やアイデアが生まれるいいインスピレーションになりそうです。

 

物事を壊しただけでは前進しないのであれば、たとえその痛みが泣いてもその痛みが進行しないという理由だけで鈍い精神があなた自身を受け入れます。そのような弱点を受け入れて前進してください。それは劇的な流域の旅です。

他の誰かにだまされても、なぜあなたはそうしなかったのですか?私の目の前の障壁が高すぎる、私は不可能を知ることに飛びつき、私はやけどをしたが、それでも私は意図的に何度も何度も飛行を続ける。そのような自信の背後にある進歩に到達することはできません現状を維持するという行為を欺くためだけに正面を見続けてください。それはまた劇的な流域の航海です。

たとえあなたが懲戒処分に夢中になっていても、それはまだそのような内臓だけには関係ありません。私は噴水を失敗させ、私の背中に穀物を再び開くために後退しなければなりません。それはまた劇的な流域の航海です。

誰があなたに言った、ドラマのなだめるような航海。自分を見落としている他の人格。それは私が自分の心の熱を忘れていないことではなく、その偉大な代替品ではありません。

それは鞭打ちながら前進している自分を誇りに思っているように私自身を誇りに思っている愚かな死体であり、彼は誰よりも強い精神的な力を持ち、そしてその果実は誰にもリーダーシップなしに使われ得るソルダー・ド・マッグの演技(ドラマ)とクソナルシシズムは、1つの強力な老化に影響を与えます。それは今まで生きてきた、それで私はそれによって一人で生きることができる。

未来への道をたどるためには、もう一度後悔に立ち向かわなければなりません。痛みの感覚に触れることで直接触れてください。冷たい精神を燃やして、それは燃えました。自分自身を見落としている他の人にとって大きな置き換えではありませんが、もう一度自分の心を忘れてしまった自分自身を点火します。それはそれ自身を導く光であり、それが進行中のトーチになるならば、何かは変わるでしょう。

私たちがこのようにしてより良い生活を送ることができたならば、ドラマソニックの大航海は、言葉そのものを分解することを目的としたマホラマのノンフィクションです。

その手で掴もうとすると、もっと景色の美しいところで遭遇します。それがAIDMAtic Live Rain-bowです。

それはまた次の話です。

 

―音楽そのものが目的ではなく、あくまでも強みを活かすための総合プロデュースのアウトプットがCDであったという帰結に、それを本気でブラッシュアップしようというのが本プロジェクトの目的の一つかもしれませんね。目的地を設定し、自分が持っている能力を把握する。それを強みとして打ち出すための言語化が今最も必要なものであると思います。

 

コン城:音楽を主役にしてしまうとCD化する事でストーリーが終了してしまいます。一般的なミュージシャンであればそこからライブという発展があり、CDはその入り口になるんですよね。その発展方法がない宅録ミュージシャンにはどういった展開でそれに立ち向かうのか、という問題提起への城台の回答がその答えになると思います。

 

グラ城:グラフィックデザイナーの起業する会社の「企業理念を具現化した記念碑」という落としどころを設定しています。そしてその後城台はどうなるのか。その後のストーリーを共有するためのアイテムであるとしています。

 

ただ実際のところ、本当に前例のないものなのでこの初歩の段階でどれだけの人が注目してくれるのか、それが心配の種です。

 

―直接的な表現で目的や夢を語るのか、様式美をデザインして共感を得るのか、圧倒的存在感とメンタルを確立して城台そのものをプロデュースしていく必要がありますね。

 

グラ城:それで言うと現在は「コンポーザー城台に完全に好き勝手やらせる」という方向で進めています。これまで宅録ミュージシャンが外に打ち出すときのデメリットだったオナニー部分を「グラフィックデザイナー城台がより良い方向に舵を切る」事で正当化させていくようにしています。

 

制作当初、Dramasochistic Bon-voyageのアートワークの方は最初かなり直接的な表現でした。最終的には裏面のデザインに配置しましたが、制作当初はこちらがジャケット表面になる予定でした。

 

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コン城:「痛覚を灼く」や「心の熱を失念した自分にもう一度火を灯す」という表現にはぴったりですね。こちらを裏面にした理由は直接的過ぎるから、ということですか?

 

グラ城:最初は単純に「もっといいものが出来たから」です。

 

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元々こちらが裏面になる予定で製作していました。「マネキンを亀甲縛りでぶら下げたりしたいなぁ」なんていうアイデアがありながらも、モヤがかかったような「白」を基調としたアートワークを制作していると、「こっちの方が表っぽい」というパッケージ感があったこともなり、逆転しました。

 

それにMahoramatic Non-fictionでもやっているのですが、CDのケースを開けた瞬間によりインパクトの強いアートワークを配置したいという目的もありました。上のアートワークはその方がより強いインパクトを与えられると踏んだんです。

 

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あとこれは結果的になのですが、Dramasochistic Bon-voyageのアートワークは「自身で撮影した写真のみで構成されるフォトコラージュ作品」です。

 

コン城:おおっ。懐かしい響きですね。

 

グラ城:Mahoramatic Non-fictionではサイトに置いてあるグラフィックデザインのサンプルを再利用して出来上がったアートワークでした。Dramasochistic Bon-voyageでは最初、ライブペイントでやっていた紙粘土を使った作品の写真を使って背景を作っていました。「Lovers Tempest」のブリザード感を出そうとしていました。それで写真をストックしているハードディスクを漁っている内に、使いたい写真が幾つかピックアップされていって気付いたら自分で撮った写真だけで作業が進められていました。

 

ちなみにマネキンの写真は8年前に撮ったものです。大学を卒業してデジカメを買って間もない頃のフォトコラージュを始めようとする最初期の写真です。こんな形で使用するとは当初思いもしませんでしたね。

 

それで作業を進めていると、ふと過去のフォトコラージュ作品の要素を入れたいと思うようになりました。「あの作品のあれをここに持って来たらいいかもしれない」という感じで。

 

元々自分で作ったものだし、何よりCDジャケット等を作っていきたいという想いでグラフィックデザイナーを名乗ってきたわけだし、職人的アーティスト像を崩す意味でも、作品からの引用と再利用を行いました。フォトコラージュ作品には、「ここまで出来ますよ」という技量を示すという側面もあったので、こうして自分のCDだとしても、過去作品がジャケットアートワークの一部として組み込まれるのは本望だと感じました。

 

話しを戻すと、これが結果的に今考えている方向性と合致しています。ある種、常軌を逸したものを正しく認識してもらうために、パッケージは楽曲全体の雰囲気を捉えながらも親和性を感じる入り口として機能させなければなりません

 

ファーストコンタクトを確実に捉える。そして楽曲との共通性で確実に掴む。共感も好意も「納得」から始まります。「納得」は全てに置いて優先されます。

 

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コン城:これからグラフィックデザイナーとして生きていく上で、今現在の最大のクライアントはコンポーザー城台。そのクライアントの性格が厄介であればあるほどいい。本当に好き勝手やっているものに、グラフィックデザイナーとしてどんなラッピングが出来るのかが鍵と言えるかもしれませんね。

 

グラ城:そう。両者が極端な力を発揮することで、その振り幅が最大化できると踏んでいます。なのでより大きな感情や情報を提供できる。この方向性こそこのプロジェクトの醍醐味ですね。

 

理解者は現れるものではありません。ぶち当たるものだと思っています。ぶち当たるまで発信し、届け続けなければなりません

 

―コンポーザーもグラフィックデザイナーも両者がいい意味で依存しあっているからこそ、お互いに最大限の力を発揮し合える関係にあるといえますね。楽曲を好き勝手に作り上げるのは、グラフィックデザイナーによって体裁を整えてもらえるからこそ可能にしている。一方でデザイナー側も、言わば蹂躙されて誕生したものにどう理解の架け橋を架けられるか、という挑戦意欲の源泉として捉えている。でよろしいでしょうか?

 

 

グラ城:そうですね。そしてそれを一番分かりやすく体現しているのがこのDramasochistic Bon-voyageだと言えます。

 

痛覚を灼き、握りつぶしてようやく目が覚める。そして前に進もうと虹を目指して旅を始まるわけです。5作あって2枚目にしてようやく動き出すんです。実際の時間軸でも、AIDMAtic live Rain-bowの制作中にグラフィックデザイナーとして復帰するので、現在はEPのタイトルを身を持って体感しているところです。

 

コン城:思い思いにやっているようでいて、全て繋がっていきます。Garapagositic Lupin-keyにも叫び声を入れています。それはDramasochistic Bon-voyageの「痛覚を灼き、握りつぶす」という悲鳴とは違い、前に進むための「気合い」という側面を持っています。リリース後にそこの微妙な違いを聴き比べてみて欲しいですね。

 

実はこの2枚のEPには、「過去に作った曲を再度作り直している」という共通点があります。過去最高のアルバムを作り上げるために、これまでの全てを総動員しようという動きがあります。

 

グラ城:さっきも出ましたが、CD無料配布は小さい世界で聴いてもらえる人に届ける事を目的に始めました。活動を再開して、それをより多くの人に届けようとしたときに「有料」に切り換える事はしませんでした。その理由の一つは活動内容の全容を理解してもらうことです。CD無料配布を先に始めてしまったからこそ、その状況・環境からどんなイノベーションが生まれるのかが自分自身でもその先が知りたいんです。

 

自分の行動にあれこれと理由付けをしています。ただ思うままにやるのは楽です。しかし人に伝えていかなければならない。伝えていきたいという思いがあります。だからどうにか伝わりやすい言葉を探して発信しています。

 

アートに「説明」は余計だと言われます。デザインに「説明」を加えたらデザインの意味がないと言われます。だからといって野放しにしたまま届かないのであれば、説明は必須です。

 

「いつか」ではなく「今」なんです。

 

理解者は現れるものではありません。ぶち当たるものだと思っています。ぶち当たるまで発信し、届け続けなければなりません。何も知らないまっさらな状態の人に、自分の活動を理解してもらう、興味を持ってもらえるような言葉を探しています。

 

進むべき道は見つけました。でもその道を進むにはまだまだ自分は足りない。弱い。そのために何度も苦しむ事をもう厭わない。それを可能にした言葉、体現していくべき言葉が「Dramasochistic Bon-voyage」です。それは「熱狂」と言い換えて「あなたとわたしの圧倒的未来のための関係性」を作り上げていくための重要な一歩を歩き出す瞬間です。

 

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Dramasochistic Bon​-​voyage

01.Eklepton thadd Pellugraw 6:52

02.Hohzkin Mimoriza 7:24

total time 14:16

Glow Defective Soldier Records 015

 


Dramasochistic Bon-voyage【CD無料配布実施中】&【FREE DOWNLOAD】

 

 

CD無料配布ページ

glowdefectivesoldier.stores.jp

 

FREE DOWNLOAD

glowdefectivesoldier.bandcamp.com

 

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 以上になります。EPの楽曲やアートワークはあくまで副産物のように、タイトルの言葉が概念に置き代わってきているのを日々感じています。来月は心の熱を取り戻す「熱狂」の下「邁進」していく過程を描いた「AIDMAtic live rain-bow」を対談企画にて掘り下げていきます。

 

 

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 対談本編にありましたキングクリムゾンの「Fracture」のレアなライブ音源がyoutubeにあったので貼っておきます。吹っ切れまくったドラムのビル・ブラッフォードによる強靭なグルーブが野性の本能をくすぐります。ミックスが暴力的過ぎる。


King Crimson ► Fracture Live in Dieburg 1974 [HQ Audio]

 

 

 


「CD無料配布とEP連続リリースによる今後の展望」Glow Defective Soldier 城台 宏典インタビュー

 

CD無料配布ページ

https://glowdefectivesoldier.stores.jp

 

 

 

ではでは。

 

 

ε(*´・∀・`)з゙βуёβуё”ε(´・∀・`*)з