Mahoramatic Non-fiction制作秘話

 地獄には救いがない。だから蜘蛛の糸というものが頭上に降りてくれば、それを希望とみて掴み、昇る。しかし現実は違う。救いや娯楽はごまんとある中で、自分の判断が蜘蛛の糸を掴む選択だった事に、人は事後になって気付く。かくしてダブルEPをボツにした城台は手元に転がった奇跡を握り締め、未開の地へ向かって歩を進めることとなる。



 上記内容が「なんのこっちゃ分からん」という方は前回のブログ記事をお読みになってから本記事を読むとすんなり入れると思いますので、そちらからお願いします。これはその続きです。
http://d.hatena.ne.jp/glowdefectivesoldier/20181105/1541443881



 さて、とりあえず手元にある曲にはまだ名前がない。あれこれ考えてもまるでしっくりこない。そこで、昔フォトコラージュでつけた名前を付けようと思い、以前途中まで作って結局完成しなかったボツ作品が1個あったのを思い出し、それをとりあえずくっつけておく事にした。3年前に最後に発表したフォトコラージュ作品の名前は「Dievon Airouche(デボン・アイルーチ)」。それと平行して作っていたのが「Jyagyawli Makcoled(ジャジャウリ・マコレッド)」。


 最初はこれでいいのかと思いながら眺めていたのだが、時間の経過とは不思議なもので、いつしかその名前はJyagyawli Makcoledのものとなった。ジャジャウリ・マコレッドはジャジャウリ・マコレッドのものとなった。凄くはまっていた。以前は作品の完成を完成を見ないままお蔵入りになっていたものが、こうしてあるべき姿のようにスッポリと納まった。まるでこの曲のために名付けられるために。ダブルEPがボツになり、まだ外には冬眠もしくは消滅と認知されていたGlow Defective Soldier。Jyagyawli Makcoledの言葉を発信することが春の芽吹きやスタートラインになると思ったのであった。


 Jyagyawli Makcoledが出来上がったからといって、じゃあこんな感じでどんどん行こうでどんどん行けないのが、永遠の素人城台さんが城台さんたる由縁である。マジで形にならない。Jyagyawli Makcoledと同じ展開の曲はいらない。一聴して奇跡を感じるような体験。万人に届くものを作ろうとは思わない。だからといって自分の琴線に触れないものを作っていていいのかといえば、そんなはずはない。2006年の活動開始からこれまで、ほぼ出たとこ勝負のフィーリング100%でやってい過ぎていたために、最初の一音が上手くいかなければ惰性で作業を続けてもいいものは出来ない。その勘だけは培われていたようだ。そのおかげで制作はまるで進まない。


音を出す。
消す。
音を出す。
消す。


 暫くして出来上がったのは、バリバリトランスでギッシャギシャにノイズをぶち込んだ曲。名前は「Alchogen Quarikuer(アルコーゲン・カリカー)」。これが確か去年の8月か9月頃。そしたら次の曲は意外とスッと出てきた。名前は「Diginent Benvlant(ディジネント・ベンブラント)」。そのディジネント・ベンブラントがアルコーゲン・カリカーよりもノイズバッキバキだったので、バランスをとるためにアルコーゲン・カリカーをさらにバッキバキにしてしまうなどをやっていた。


 この頃になると、ではCDにしてリリースするのであればどういった形がいいのかを同時進行で思案・着手し始める。12曲入りのダブルEPに対し少数精鋭のEPを作ることとなり、6曲構成のEPがかなり落とし所として落ち着いた。ジャケットもダブルEPのアートワークを土台にして進めていこうとしていたが、やはりまるでコンセプトが異なるので一から作り直すこととなった。


01.Jyagyawli Makcoled
02.Cooknedga Hiiznee
03.Diginent Benvlant
04.Hohzkin Mimoriza
05.
06.Alchogen Quarikuer


 この時は上記のような感じになっていて、LPで考えるとA面・B面それぞれ3曲ずつ入ると仮定して、アルコーゲン・カリカーと対になる存在としてディジネント・ベンブラントが生まれた。さらにジャジャ(面倒なのでこっから曲名を略していきます)とディジネントはあまりにも繋ぎが悪くくっ付かないので、それをとりもつような曲が欲しい、かつちゃんと自己主張の強い自立した曲が。それで生まれたのが「Cooknedga Hiiznee(クークネガ・ヒーズネー)」。エレクトロファンクな音像でとても聴きやすい出来栄え。


 前半の終わりにディジネントがスピーカーぶっ壊す勢いで突き進んで一旦緩やかに落ち着く。その構成でバトンを受け取るのが「Hohzkin Mimoriza(ホフスキン・ミモリザ)」。ボツになったダブルEPの中で一際タイトルが気に入っていて、これだけは引き継ごうと思っていたミモリザ。教会音楽のような包容力をまといながら、音が割れない高域の限界スレスレを攻める頑張り屋さん。それをもう一度作り直そうとスタメン入り。


 最後にアルコーゲン・カリカーにバトンを渡す曲は、ジャジャに続くリード曲。簡単に言うと強力なシングル曲が欲しかったのである。ジャジャは覚醒して本気を出すのに2〜3分かかる。単体で見た時の完成度は高くとも、前に出していくにはプロモーションの観点ではあまり前には出せないと考えていた。その役割を担えるだけの逸材。しかし上に書いた通り永遠の素人の城台さんに、そんな簡単にシングル曲を作り上げることが出来るのか。


 これが2017年最大の事件となる。正直に言うと、この曲に関しては大まかな部分だけで、細かいレコーディング風景は覚えていない。制作のモチベーションの全てを持っていかれそうになる出来事が発生した(これについてはいつか書く日が来ればいいなと思っています。でも今は書きません書けません)。しかし逆にそれが制作のモチベーションになってしまった。かなりの速度で出来上がった。ジャジャを作っていたそれ以上の手応えを感じた。5分間一息つくことなく突っ切る。それぞれの音がお互いに補い合いながら爆裂し、ギッタギタにノイズまみれなのに美しくまとめ上がっている。


 名前は同時期に全く違う角度から降って湧いた。「Leoryphan Vistavkifco(レオリーファン・ビスタフキフコ)」。ミックス前から、それよりも音を録っていた段階から確信していた。この曲はこれまでの最高傑作だ。説明の方法はない。言葉に表せない力がこの曲には宿っていると思う。聴けば聴くほど凄みを感じる。これを完成させて、一つの考えが頭に浮かんだ。



「このEP、6曲もいらない」



 5曲目に自分が最高傑作だと思い込んでしまった曲を配置している。その後にアルコーゲン・カリカーがある。そんな終わらせ方に意味はあるのか。せっかくの最高傑作を意識してもらうには、6曲だと意識を分散させてしまう。しかもそれぞれが特色を持った6曲。完璧な構成のCDだったらアルバムでやればいい。これはEPなんだ。そう思い立ってから、苦渋の選択を迫られる。


 本当に大事な曲だけ。3曲にしよう。ジャジャは生かす。2曲構成のEPも考えた。でもジャジャとビスタフキフコは綺麗に流れていかなかった。完全に別の世界にいる。否、両者は完全に創造主となってそれぞれの領域を築いている。全く新しい小宇宙を創造している。


 もう一曲はどうしようか。この2曲をとりもつ曲。クークネガ・ヒーズネーは駄目だった。この3曲だとビスタフキフコが浮いた。どうにか形にならないかとダブルEPのOqufermum Ingiddを持ってきてみたりと色々とパズルを繰り返した。しかしそこでミラクルが起きる。収録時間がその3曲で14分41秒。実はこのEPは型番がGDSR014.即ち城台さんがリリースする14枚目のCDになる。


ジャジャ5:28
ビスタフキフコ5:14


 この間に入る曲は3:57である必要がある。そこで2曲のブリッジにならずに個性を発揮できる曲。そこで一度は候補からもれたアルコーゲン・カリカーとディジネントを目の前に並べた。アルコーゲン・カリカーは4:08.ディジネントは3:30。ディジネントでいこう。


 しかし上で書いた通り、ジャジャとディジネントは直接つなげようとすると反発する。クークネガ・ヒーズネーのない状態では配置できない。そこでパソコンの中にあるボツ音源の海の中からヒントを得ようと潜っている時に、ダブルEPの制作中にボツになった別のディジネント・ベンブラントがあった。その曲の一部をイントロにしてくっつけた。そうすることでディジネントは見事3:57の曲に変化し、見事3曲のEPが形作られた。


 ジャジャとビスタフキフコに比べてディジネント・ベンブラントの名前に弱さを感じていた。そこでダブルEPの中でこのままボツにしたらもったいない名前がいくつかあって、それを引き継がせようと思い、「Benthend Warrham(ベンセンド・ヴァルルハム)」に名前を変更。


01.Jyagyawli Makcoled
02.Benthend Warrham
03.Leoryphan Vistavkifco


かくしてこのようにEPの体裁が整ったのであった。これが去年の12月。


 ジャケットは同時進行で制作していた。コンセプトは「白」写真を切り抜く時間がもったいないと感じるほどに急いでいた。そこでGlow Defective SoldierのHPにあるグラフィックデザインのサンプル画像を流用しようと思い立った。これは手を抜いたということではなくて、これらは全てプロダクト化されていない、あくまでサンプルとしての存在であったので、クオリティは低くない。これらはちゃんと作品として完成させて世に放つべきだと思った。サンプルには実績がない。実績のある成果物こそ最高のサンプルと成り得るのではないか。命を吹き込もう。存在意義を与えよう。


そうしていいところを少しずつつまんで再構築したのが今回のジャケットである。


 出来上がる。かなり急ピッチで作り上げたので100%どんなやり方で作っていたのかは覚えていない。ストーリーも大事だけれども、それよりも未来に向けたメッセージのほうが大事なので、このEPではそこを語るべきだなと思うのです。


 それでもまたしても長くなってしまったので、ここで一旦区切りをつけます。今回は制作秘話として、次回はこのEPが何を言いたいのか、そのコンセプトを語りたいと思います。



ではでは(・∀・(・∀・(・∀・*)



Youtubeにて全曲視聴出来ます。


CD無料配布実施中。ぜひお手元に置いてあげて下さい。

https://glowdefectivesoldier.stores.jp/